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【重要】商標審査便覧の改訂(平成30年4月2日より)

<新着ニュース> 2018年3月19日 by 永露祥生

本日、特許庁ウェブサイトにて、商標審査便覧の改訂が告知されました。

改訂後の審査便覧の適用は、公表日となる平成30年4月2日からとなります。
なお、経過措置がないことから、公表日に審査・審判に係属しているすべての出願が対象となります。すなわち、平成29年にした出願であっても、実際の審査が4月2日以降となる場合は、改訂後の商標審査便覧が適用されることになるようです。


実務上、大きく変更となる注意点

特許庁ウェブサイトによれば、今回の改訂は、主に以下の点となります。


(1)地域未来投資促進法の適用による地域団体商標の商標登録出願に係る
   主体要件の明確化に係る改訂
(2)歴史的・文化的・伝統的価値のある標章からなる商標登録出願の取扱い
   及びそれに関連する改訂
(3)新しいタイプの商標に係る審査運用の更なる明確化に係る改訂
(4)商標の使用又は商標の使用の意思を確認するための審査に関する運用に
   係る改訂

このうち、実務上、特に注意が必要なのが、(4)の改訂です。
改訂後は、以下のような審査運用がなされることになります。

類似群のカウント方法を変更します
 すなわち、1区分内における指定商品又は指定役務に付与されている類似群数を
 単純にカウントすることとします。例えば、現在1個としてカウントを行っている
 複数類似群が付与されている商品・役務についても、1個ではなく、
 付与されている数をカウントします。
1区分内における類似群の上限数は、「22個」とします
③小売り等役務に係る取扱いについては変更しません。
④商標の使用の意思を明記した文書も援用することができることとします。
 ただし、出願後3~4年以内までに商標の使用又は商標の使用の意思があることに
 合理的な疑義がある場合は、あらためて確認を行うこととします。

このうち、特に①と②の変更により、商標登録出願の際、願書への指定商品・指定役務の記載要領に大きく影響しますので、注意が必要です。


弁理士コメント

「類似群」とは?

商標登録出願をするには、願書を作成して提出します。
願書には、商標登録したい商標を使う商品・サービスを指定します(「指定商品・指定役務」と言います)。ここで指定したものが、商標権の権利範囲(=商標の保護範囲)となりますので、指定商品・指定役務は、しっかりと検討することが重要です。

ところで、指定商品・指定役務には「類似群(類似群コード)」が付与されます。
いわゆる分類コードのようなもので、簡単に言えば、同じグループの商品・サービスには、同じ類似群が付けられるというものです。これにより、商品や役務の間における類似関係が推定され、審査実務上の便宜が図られています。

たとえば、第30類の「菓子」には「30A01」、「コーヒー」には「29B01」、「パン」には「30A01」が付けられます。類似群が同じ「菓子」と「パン」は同じグループですが、これらは「コーヒー」とは違うグループになりますよ、ということを意味します。すなわち、「菓子」と「パン」は類似関係にある商品と推定されます。


1区分内における類似群の上限数が、「22個」に

ここで、話を願書の作成に戻しますが、改訂前(現在)の審査運用では、願書に記載できる指定商品・指定役務の数が制限されていました。すなわち、実際に使用をしている事実や、将来の使用予定があるといった特別の事情がある場合を除いて、指定商品・指定役務の記載は、1区分内で8類似群を超えてはいけないという運用がなされていました。

したがって、特別な事情がない場合、願書に記載できる指定商品・指定役務は、最大でも7類似群分までとなります。そのため、権利を広めに取得したい場合には、願書に記載する指定商品・指定役務をしばしば厳選する必要があり、これが出願人・代理人の間でも悩ましい問題となることが少なくありませんでした。

今回の改訂で、1区分内における類似群の上限数は、「22個」とします。ということですので、現在に比べて、かなり多くの指定商品・指定役務が記載できるようになる見込みです。出願人にとっては、広い範囲での権利の取得(商標の保護)が期待できるようになり、歓迎的すべき改訂と言えるでしょう。

ただ、実際に商標を使用する予定のない指定商品・指定役務をたくさん追加するということは、その分、不使用取消審判のリスクも増すということを意味します。願書の作成は、これまで通り、依然として戦略的な観点を含めて行うべきでしょう。


類似群のカウント方法が変更に

もう1つ重要な変更点が、類似群のカウント方法を変更します。すなわち、1区分内における指定商品又は指定役務に付与されている類似群数を単純にカウントすることとします。というものです。

商品や役務には、複数の類似群が付与されているものも存在します。
たとえば、第9類の「電子出版物」には、「26A01」と「26D01」の2つの類似群が付けられています。

このような、複数の類似群が付けられているものは、上記の7つの類似群をカウントする際には、例外的に「合わせて1つ」とされておりました。つまり、「電子出版物」の場合は、「26A01」と「26D01」で合わせて1つとカウントされ、他にあと6類似群分の指定商品が追加できたわけです。

今回の改訂で、このような運用は廃止され、「単純にカウントする」ことになるようです。つまり、上記の「電子出版物」を指定すると、類似群の数は2つとカウントされることになります。改訂後の類似群の上限は「22個」となりますので、比較的余裕はあるはずですが、カウント方法には注意する必要があります。


その他の注意点

現在、類似群の数が8つ以上であることを理由に拒絶理由通知を受けている場合は、応答タイミングをよくご検討された方が良いでしょう。改訂後の商標審査便覧が適用される平成30年4月2日以降であれば、指定商品・指定役務の削除等が不要となる余地が考えられます。

また、応答期限が平成30年4月2日の直前ということであれば、あえて期限延長をすることで、改訂後の商標審査便覧の適用後に応答するという手もあるかと思われます。ただ、あくまで適用時は審査官による実際の審査タイミングによるでしょうから、4月2日よりも前に応答手続をしたとしても、改訂後の商標審査便覧が適用されるケースもあると予測されます。とはいえ、現時点では詳細な運用基準が明らかではありませんので、このような場合は、一度担当審査官にご相談されるのがよろしいかもしれません。