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商標の審査・審判書類が誰でも照会可能に

<新着ニュース> 2018年11月30日 by 永露祥生

商標にかかわる人々にとってはお馴染みの「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」のデータベースですが、近いうちに機能改善がなされる予定であるとのことです。
 そこで、今回は主な改善点(変更点)についてご紹介いたします。


商標の審査・審判書類が照会可能に

大きな改善点として、商標の審査・審判書類がJ-PlatPatで照会可能になる点が挙げられます。

現行のJ-PlatPatでは、「経過情報」から手続の記録を確認することはできますが、各書類の具体的な内容を閲覧することはできません。よって、他人の出願に係る意見書などの書類の内容を確認したい場合には、費用をかけて包袋閲覧請求をする必要があります。

しかし、今般の改修により、商標の審査・審判書類についてJ-PlatPatで照会可能になるということです。ただ、照会可能なのは「平成31年1月1日以降に特許庁で受け付けた申請書類」に限られるということです。また、「特許庁が発送する書類及び面接記録・応対記録等も平成31年1月1日以降に作成された書類が照会対象」とのことです。

つまり、2019年1月1日以前に提出された書類、特許庁より発せられた通知等については、改修後も基本的には照会することはできないということになりそうです。

また、特許庁のアナウンスによれば「すべての書類が照会対象となるわけではない」ようであり、以下のように説明されています。

J-PlatPatで照会可能となる主な申請書類は以下のとおりです(但し、法域等により照会可否が異なる場合がございます)。
願書、審判請求書、意見書、手続補正書、上申書 等

※J-PlatPatでの照会の対象外となる主な申請書類は以下のとおりです。
早期審査に関する事情説明書、手続補足書、刊行物等提出書 等

※その他に、特許庁が発送する書類(登録査定、拒絶査定、拒絶理由通知書、審決等)や面接記録、応対記録等が照会可能となります。

現時点では、どのような書類等が照会可能か完全には明らかにはされていないようですが、上記に照らせば、添付資料が多いものや、データ化しにくいものが対象外となるのではないかと推測されます。商標分野の場合、紙媒体での提出が必要な不使用取消審判の審判請求書や、異議申立書がどのように取り扱われるかが気になるところです。


改修にともなう注意点

このように、今般の改修によって、商標の審査・審判書類が誰でも照会可能となるわけですが、特許庁のアナウンスで、「個人情報や営業秘密等を含む書類についてもJ-PlatPat上での照会が可能となり得ます」とされている点には、注意する必要があるでしょう。

ただし、書類中の【住所又は居所】【電話番号】【ファクシミリ番号】の項目に記載された内容については非表示となり、<省略>と表示されるとのことです。

また、オンライン手続において【提出物件の目録】及び【添付物件】の項目を設け、それらの項目より下に、画像データとして貼り付けた場合には、その画像データは表示されないとされています。たとえば、【提出物件の目録】の項目を設け、【添付物件】の【物件名】を「連絡先」として、【内容】は画像データとして貼り付けることで、当該内容の表示を回避することができます。

とは言え、その他の場合に非表示にする方法については、現時点では明らかにされていないようですので、引き続き情報を追いかける必要があるでしょう。意見書や上申書の内容の中で、個人情報や営業秘密等を含む場合もあり得るでしょうから、そのような場合の対処法についても、特許庁には追って丁寧に説明していただきたいところです。

このような点もあり、代理人である弁理士にとっては、改修後、依頼人の情報の取り扱いについて現在以上に気を遣う必要がありそうです。

弁理士サイドとしても、改修後の運用には若干気になる点があります。
たとえば、書類上の職印の印影や、手数料支払処理で用いる「振替番号」や「予納台帳番号」が、誰でも照会可能になるというのは、個人的には抵抗があるところです。


コメント

われわれ商標弁理士からすると、改修にともなって、接することができる情報はたしかに増えると考えられますが、その一方で、書類に記載する内容(特に、依頼人に関する情報)についてはかなり気を遣うよう、注意する必要がありそうです。

やはり、「原則として公開されない」ものが、「原則として公開される」ものとなるのは、少なからず日頃の実務のやり方にも影響があるのではないでしょうか。

個人的には、現在のJ-PlatPatに特に不満もないので、利便性よりも手間の方が増えるような気もしていますが、実際に使ってみることで改修の恩恵を感じられることを期待しています。

なお、特許分野についてはすでに照会可能となっておりますので、実際の運用については参考にすることができるでしょう。

■参考:「意匠・商標の審査・審判書類がJ-PlatPatで照会可能となります
 (特許庁ウェブサイト)