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商標登録が「5年登録」という誤解について

<新着コラム> 2021年4月27日

ここ数年、当事務所に相談や問い合わせをされた方の中に、「商標登録は5年登録である」と理解している方を見かけます。また、当事務所で商標登録費用のお見積もりをお出しした際に、「なぜ、登録料は5年分ではなく10年分なのか?」という疑問を持たれる方もおられるようです。

商標登録は、商標権の存続期間である「10年」が原則です。
そして、商標登録料は「10年分」を支払うことが、その前提となります。

よって、われわれ商標専門の弁理士からすると、正直「?」が付く反応です。

最近、このように、なぜか商標登録が「5年登録」であるという誤解が、一層見受けられるように感じます。そこで、本コラムでは、あらためて商標登録の期間や商標登録料の支払いについて、注意喚起の意味も含め、ご説明いたします。



1.商標登録は「10年」が原則

商標登録の有効期間とは、すなわち、商標登録によって生じた「商標権」の有効期間(存続期間)ということになります。そして、商標権の存続期間とは、原則として商標登録日から「10年間」です。

ですから、審査で「登録査定」が出た際に、特許庁に支払う商標登録料というのは、「10年分」というのが前提となります。

「私は3年分だけ払います」とか「私は7年登録したいので、7年分を支払います」といったような、登録期間や登録料の支払いについての自由度はありません。



2.ただし、商標登録料は分割払いが可能

上述のように、商標登録料は、「10年分」を「一括」で支払うのが基本です。

一方で、これを前期・後期の2回に分けて、分割払いとすることもできます
つまり、10年分を「5年分×2回」に分けて支払うということになります。

後期分を支払う期限は決まっており、この期限内に支払われない場合は、前期分をもって商標権が消滅します。つまり、商標登録が5年でなくなってしまうということです。

ではなぜ、このような分割払いが認められているのかをご説明します。

まず、商標登録をした商標の中には、短期間しか使わないことが予想される商標や、とりあえず登録したけれど本採用となるかわからない商標というのも少なくないはずです。そのような商標の保有者からすると、「登録料を10年分も支払って、本当に10年間も商標登録をしておく必要なんてあるのだろうか?もったいないのではないか?」と感じる場合も多いと思われます。

そこで、半分の期間である5年程度を目処に、そのような商標の保有者に対して、商標登録の維持の要否をあらためて検討する機会を与えられるという観点から、このような登録料の分割払いが認められているのです。

すなわち、5年程度経ったところで、「全然使っていないし、もう商標登録は必要ないや」とか「また使う予定もないから、これ以上は商標登録の意味もないや」と思われれば、あえて後期分の登録料を支払わないことによって、商標登録を消滅させ、保有商標を整理することができるわけです。もちろん、逆に引き続き商標登録の維持が必要であると判断すれば、後期分の登録料を支払うことになります。

ですから、注意しなければいけないのは、「商標登録は10年が原則であるけれども、商標登録料の支払いは2回に分割することもでき、その後期分を支払わないことによって、登録を5年で消滅させることもできる」というのが、正しい理解だという点です。

いわば、5年目を迎えるところで商標登録を放棄するイメージです。
商標登録に「5年登録」というオプションがあるわけではないのです。

たしかに、後期分の商標登録料を支払わなければ、結果的に「5年登録」という状況にはなりますが、それを原則であるかのように理解するのは、少し話が違うと思います。



3.商標登録料を分割払いとした場合のデメリット

上述のように、途中で商標登録の維持の要否をあらためて検討した結果、不要と判断して後期分の登録料を支払わない場合は、無駄な出費を抑えられるという点で、分割払いとするメリットがあります。

しかし、このケースを除けば、分割払いには「デメリットしかない」とも言えます。

まず、料金面のデメリットが挙げられます。
実は、商標登録料は、10年分を一括で支払う場合よりも、2回に分割して支払う場合の方が、金額が「割高」になるのです。

具体的には、10年分を一括払いの場合は「区分数×28,200円」、分割払いの場合は「区分数×16,400円×2回」となります。つまり、1区分ごとに4,600円も多くかかってしまいます。

なお、特許事務所に依頼する場合は、一般的に後期分の納付手続についてのサービス手数料も、追加で発生することになります。

ですから、上述のように、商標登録をした商標が、短期間しか使わないことが予想される商標であるとか、とりあえず登録したけれど本採用となるかわからない商標であるといったような事情がなければ、最初から10年分を一括納付した方が、トータルでは安くて済むのです。後期分の支払いが前提の分割納付であれば、「出費が増えるだけ」です。

また、手続面のデメリットも挙げられます。
商標登録料を10年分一括納付としておけば、更新時期が近付くまで、基本的に何の手続もする必要はありません。しかし、分割納付とすれば、5年程度経つ時期に、また後期分の登録料の納付手続をしなければなりません。

手続の手間という点でも面倒ですが、納付時期をしっかり管理しておく必要があるという点でも、余分な負担がかかると言わざるを得ないでしょう。

このように、商標登録料の分割払いにはデメリットも少なくありませんので、これらを十分に理解した上で、納付方法を選択・決定することが大切です。



4.なぜ、誤解が生じていると考えられるか?

商標とは、使えば使うほど価値が蓄積するものです。
企業が「ブランド」として使っていくなら、できるだけ長いスパンで使い続け、末永く商標登録がされている状態が理想と言えます。

ですから、上述のような特別な事情がない限り、商標登録は長い期間の方が望ましく、商標登録料は10年分を一括納付するのが普通ですから、分割払いがスタンダードであるといった考え方など、まず出てこないはずなのです。

にもかかわらず、冒頭のように、「商標登録は5年登録である」と誤解している方をしばしば見かけるのはなぜなのでしょうか?

この原因については、このような誤解を持った相談者等による過去の言動から、思い当たる点がありました。そして、実際に少し調べてみたところ、たしかに、その影響はあるかもしれないと思われました。もちろん、これだけが原因ではないでしょうが、一つの要因となり得る可能性はあるのではないかと考えられます。

それは何かと言うと、商標登録サービスを提供している特許事務所が、インターネット上で掲げている「料金表の内容」です。

というのも、ネット上で商標登録サービスを広告宣伝している、特に検索順位が上位の特許事務所の料金表などでは、商標登録料の金額が、なぜか分割納付を前提としているものが多く見られるのです。つまり、金額としては、分割納付の前期分である「16,400円」と表記されています。

この点、後期分の納付や費用が必要な点については何も書かれていないものもあれば、どこかしらに注意書きがされているものもあるようです。中には、「5年登録」というメニューしかなく、あたかもそれがスタンダードであるかのように書かれているものもありました。ほかには、登録料の支払いについて「5年分一括」という、よくわからない表記も見受けられました。

繰り返しになりますが、商標登録に「5年登録」という概念はなく、10年の登録期間の後半分を、後期の登録料を支払わないことで放棄することも可能というだけなのです。

こういった誤解を生みかねない表記が比較的多く見られることを考えれば、ネット検索で商標登録を依頼する特許事務所を探しているような方々が、「商標登録は5年登録である」と理解していたとしても、おかしなことではないのかもしれません。

ちなみに、一般的な商標弁理士の場合、依頼人が分割納付を希望してきたら、「本当に分割払いで良いのですか?」と心配するのが普通の反応だと思います。少なくとも、依頼人に一切のヒアリングもせずに、最初から分割払いを勧める弁理士などいないでしょう。



5.もしも依頼人を欺く営業手法なのであれば問題

心ある一般的な弁理士であれば、商標登録費用の見積もりを提示する際に、分割納付を前提として商標登録料の金額を示すことなど、まずないでしょう。私もこれまで約15年、商標専門の弁理士をやってきましたが一度もありません。見積書には10年分一括納付の金額を記載した上で、注意書きにて分割納付の選択肢について言及しています。

ではなぜ、このように分割払いがあたかもスタンダードであるかのような表記が、特許事務所のウェブサイト上には多いのでしょうか?

わかりやすい理由として考えられるのは、「料金を安く見せられるから」でしょう。
特に、「総額」を提示する場合には有効となります。
実際、このような表記をしている特許事務所のサイトを見てみると、どうやら商標登録サービスを格安で提供することをアピールしているものが少なくないようでした。

なるほど、そういった格安特許事務所の間で「価格競争」に陥る結果、どこかの特許事務所が商標登録料の金額を分割納付の料金とすれば、他の特許事務所もそうせざるを得なくなるのでしょう。自分の事務所だけ正直に10年分一括の料金を載せてしまうと、他の特許事務所より12,000円程度も高くなってしまいますから、これでは価格競争に負けてしまいます。

そもそも、弁理士が価格の安さで競うのはどうなのかという疑問はありますが、近年は弁理士の数が増加していることもあってか、競争が激化し、格安の商標登録サービスを売りとした特許事務所もかなり増えているように見受けられます。「格安サービスの増加」については、弁理士業界だけでなく、他の士業の業界でも、概ね状況は同じようです。

しかし、ここで大切なことは、弁理士が我欲のために依頼人の利益を犠牲にすることはあってはならないということです。

弁理士には、公正・誠実な業務遂行の義務(弁理士法3条)、品位・信用の保持義務(弁理士法29条、会則41条)があります。また、会則41条の2では、「会員は、依頼者に対し弁理士の報酬及びその他の費用について必要な説明をし、理解を得るよう努めなければならない」とされています。

もしも、料金を安く見せることができるからという安易な理由で、分割納付があたかもスタンダードであるかのように料金表などに掲載し、依頼を受けた後も登録料納付の選択肢について依頼人にまったく説明をすることなく分割納付で進めてしまう、ということであれば、さすがに、上述の弁理士の義務を果たしていないと言わざるを得ないでしょう。これは、依頼人を欺くに等しく、少なくとも、公正・誠実な業務遂行とは言えないと私は思いますが、皆様はどう思われますでしょうか?

もちろん、上述のような料金表等の表記をしているからといって、弁理士がこのように対応しているとは限りません。あくまで、「もしも」という仮定での話です。

しかし、いずれにしても、こういったものがより多く見られるようになれば、一般の方々の「商標登録は5年登録である」という誤解はますます広まってしまう可能性があります。そして、これが結果として、依頼人の利益を害してしまうおそれもあるでしょう。

商標登録料の金額として分割納付の場合の料金のみを掲載することについては、心ある弁理士の間では昔から問題視されてはおりました。以上の次第ですので、商標登録のサービスに力を入れている弁理士におかれましては、ぜひとも依頼人の正しい理解や利益をも重視した上で、上述の点について見直していただけることを願うばかりです。