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【商標調査】称呼検索だけでは危険な理由とその一例

<新着コラム> 2023年3月31日

知財や法務の担当者になると、「商標調査」の機会もよくあると思います。
商標調査には、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を利用するという方も、少なくないでしょう。

このデータベースを用いて、調査対象の商標と同じ商標や、似たような商標が、他人によってすでに登録されていないか等を実際に調べていきます。

その具体的な方法としては、「称呼(類似検索)」の検索項目を用いて調査を実施するのがオーソドックスと言えるでしょう。専門家である弁理士でも、この項目での検索をしないという者は、おそらく皆無であろうと思われます。

一方で、この「称呼(類似検索)」や「称呼(単純文字検索)」、すなわち「称呼検索」だけで商標調査を終わらせている、ということはないでしょうか?

当職がこれまでに見てきた弁理士や知財担当者の中には、このように「称呼検索」だけで調査を終わらせている人というのも、実は散見されました。同じような方は、意外と多いのではないかと予想します。商標調査には、厳格に定められた手順やルールなどがあるわけではなく、どうしても我流になりがちなので、ある意味でしかたがないとも言えます。

しかし、称呼検索だけでは、商標調査としては不十分と言わざるをえません。
今回のコラムでは、その理由の一つを実例を挙げた上で、言及したいと思います。



1.特許庁が称呼を誤って付けていることがある

当職のような商標専門の弁理士からすると、称呼検索だけの商標調査が不十分であることは当然に理解されていることであり、常識とも言えます。

専門的に言えば、その理由は様々です。

今回はそのうち、わかりやすい理由を一つ挙げてみましょう。
それはズバリ、「特許庁が称呼を誤って付けていることがあるから」です。

どういうことかピンとこない方もいるかと思いますので、少し補足します。

まず、特許庁に出願された商標は、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」等のデータベースで利用できるようにデータ化(電子化)されます。この商標データには、特許庁によって当該商標の称呼(読み方)が付けられることになります。

具体的には、「(561)称呼(参考情報)」として、以下のように称呼が付けられます。

「(561)称呼(参考情報)」の表示例

「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」における「称呼検索」では、ここで付けられた称呼をキーとして、検索処理がされ結果が抽出されることになります。

ただし、ここで付けられる称呼は、実は必ずしも一定ではないという事実があります。まったく同じ商標であっても、まったく同じ称呼が付けられているとは限らないのです。たとえば、「紫苑」の登録商標は多くありますが、このうち「シオン」だけの称呼が付けられたものもあれば、「シオン」と「シエン」が付けられたものもあるという具合です。

おそらくは、その時その時の作業担当者が異なることが原因でしょう。この点、特許庁もわざわざ「(561)称呼(参考情報)」と表記して、あくまで「参考情報」だと言っていますので、暗黙の了解と理解すべきです。また、この程度のブレであれば、調査結果自体にはさほど影響がないことがほとんどです。ちなみに、上掲の例でもそうですが、多くのケースでは、特許庁は多少広めに称呼を付けています。

一方で、このように「称呼の付け方にブレがある」のではなく、そもそも「称呼が誤って付けられている」場合においては、商標調査で深刻な問題となり得る可能性があります。



2.称呼が誤って付けられた商標の一例

称呼が誤って付けられている」場合といっても、当職の知る限りでは実際にはめったにありません。さすがに特許庁も、この作業には十分な注意を払っているのでしょう。

ただ、コロナ禍の2021年頃からは、個人的に「称呼の付け方が不十分では?」と思われる商標データをポツポツ見かけるようになった気がします。今回、下記に一例として挙げる商標も、2021年に出願されたもののようです。

では、実際に「称呼が誤って付けられている」商標の一例を見てみましょう。
まずは、以下の商標データをご覧ください。
※他者様の商標なので、必要箇所以外は伏せさせていただきます。

称呼が誤って付けられた商標の例

一部伏せていますが、「商標〇〇〇」という商標となります。
当職が商標登録している「商標クリニック」のような構成とご理解ください。

ここで、「(561)称呼(参考情報)」を見てみると、本来であれば「ショーヒョー」と称呼が付けられるべきところが「ショーショー」と付けられています。これは、明らかに特許庁の作業ミスでしょう。おそらく、2023年3月30日現在まで、出願当初からずっとこのままであったと思われます。

さて、この状態のまま、正しい称呼である「ショーヒョー〇〇〇」で称呼検索をすると結果はどうなるでしょうか?

まず、「称呼(単純文字検索)」の場合は、検索結果に出てきません。
また、「称呼(類似検索)」の場合は、本来であれば「称呼基準」は「01」として検索結果の最上段に表示されるべきところ、実際には「08」として最下段に表示されています。

称呼が誤って付けられた商標の検索結果

今回のケースでは、検索結果が全部で4件しか出ていないことから、しっかり目を通せばその存在に気付くことはできるかもしれません。しかし、一般的には、「称呼基準」が「08」で検索結果に出てきた商標まで、じっくりとチェックする人は多くないと思われます。特に、検索結果が数十件、数百件と出れば、スルーしてしまう可能性はかなり高いでしょう。

この例のように、もしも商標の称呼が誤って付けられている場合、称呼検索だけの商標調査では、「まったく同じ商標があっても、見落としてしまう可能性もある」という点には、十分な注意が必要です。商標調査においては、このようなデータの誤りもあり得ることを常に念頭に置いて、実施していくべきでしょう。

人間がやることであれば必ずミスはあります。称呼が誤って付けられるミスというのも、ある程度は仕方がないとは思います。とはいえ、当事者にとっては、このような小さなミスでも後に甚大な損害に繋がるリスクがあります。その点で、必ずしも「小さなミス」とは言い難いと思います。特許庁には、複数人によるダブルチェックを徹底するなど、できるだけ万全の対応をとっていただきたく思います。

※「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」の商標データは、適宜更新されることがあるようです。よって、特許庁の関係者が本コラムを目にした場合などは、上記商標の称呼も追って正しく修正されると思われます。



3.基本的な検索を怠らず、さらに工夫を加えて

ところで、今回の例で挙げた商標については、普通に「商標(検索用)」の項目に、そのまま「商標〇〇〇」と入力して検索すれば、きちんと検索結果に出ますので見落とすことはありません。

おそらく、あまり商標調査に馴染みのない方々は、まずはこのような調査手法を試みることが多いのではないかと思います。そういった点では、かえって調査初心者の人の方が、今回の例では見落としの可能性は低いのかもしれません。むしろ、商標調査をかなり経験していて、普段から称呼検索を多用している人の方が、慣れや慢心から省略する可能性があり、ある意味で危険と言えるかもしれません

どんなに商標調査に慣れていても、「商標(検索用)」の項目を使ったごく基本的な検索を決して怠らないことが、きわめて大切と言えるでしょう。

また、この項目を使う場合は、たとえば「商標?」、「?〇〇〇」、「?商標?(AND)?〇〇〇?」等の検索も行うなど、想像力を働かせて調査に工夫を加えることも大切です。

このような検索もしておけば、たとえば「商標△△〇〇〇」とか「△△商標〇〇〇」といった他人の登録商標がすでに存在していた場合でも、見落とすことはありません。同一・類似とまではなくとも、採用すべきではない商標というのは少なくありません。こういった商標を事前に見付けるのも、商標調査の大切な役割です。

ちなみに、最初に「あるとマズイ」と考えられる全ての商標のパターンを想定し、そこから逆算して考え得る検索ロジックをモレなく挙げた上で、それぞれ念入りに検索していくというのが商標調査のコツであると、個人的には思っています。

以上、今回のコラムが少しでも皆様のご参考になれば幸いです。


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