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その商標、商標登録できていたのに・・・

<新着コラム> 2023年5月16日

商標の仕事をしていると、「登録拒絶」になった商標を調べることが少なくありません。そして、「どのような経緯で登録が拒絶されたか?」についても、同時に確認することがよくあります。

そこで、実際に登録拒絶となった経緯をチェックしてみると、審査で拒絶理由通知が発せられた後、出願人が「何もしていない」ことが意外と多かったりします。何の応答もしなければ、当然に登録拒絶は確定することになります。

たしかに、一見して明らかに識別力がないと考えられる場合や、まったく同一の先行登録商標が存在していた場合などは、何の対応もせずに、そのまま諦めるということもあるでしょう。しかし、その一方で、拒絶理由の内容が軽微であるにもかかわらず、何も応答しなかったことで登録拒絶となっているケースも少なくはない印象があります。

その商標、商標登録できていたのに・・・。

このようなケースを見かけるたびに、残念な気持ちになります。
きちんと対応しておけば、まず登録は認められたはずなのです。

気のせいかもしれませんが、特に近年によく見かけるようになった気がします。
そこで今回のコラムでは、この点について少し述べてみたいと思います。



1.無応答のケースの大部分が「自力出願」?

商標登録出願をするには、大きく2つの方法があると言えるでしょう。

1つは、自分で願書を作成して、自分で出願手続をするやり方。
いわゆる「自力出願」と言えるものです。

もう1つは、弁理士(特許事務所)に依頼するやり方。
弁理士が代理人として、願書の作成や出願手続を進めます。

本来、商標登録には専門的知識が必要であり、決して簡単な話ではありません。しかし、出願書類となる願書の形式がシンプルであるためか、「商標登録は簡単」だと誤解している方は少なくありません。そういった方たちが、費用削減のために、弁理士には依頼せず自分で出願するという前者のケースは、実は少なくないのです。

近年はコロナ禍もあって資金に余裕のない事業者も多いでしょうし、インターネットで検索すれば「自分で商標登録できる方法」のような記事も多く見付けられるというのも、それを助長しているのかもしれません。

しかし、審査で拒絶理由通知が出て、その理由が軽微であるにもかかわらず、出願人が何の応答もせずに登録拒絶となっているケースは、このような「自力出願」による場合が大部分であると考えられます

正確な統計を取って調べたわけではなく、あくまで当職が接した事例からの経験則によるものですが、おそらく間違った認識ではないであろうと思われます。



2.「拒絶理由通知=登録拒絶の確定」ではない!

では、なぜ上述のような傾向があると考えられるでしょうか。

その主な理由としては、「そもそも、対応の仕方がわからない」という点が挙げられるでしょう。出願手続までは何とか自分でやったものの、やはり専門的な知識がなければ、拒絶理由通知に対しての応答手続は一般的には難しいと思います。

ただ、それ以前の話として、「拒絶理由通知=登録拒絶の確定」であると誤解している方が実は多いのではないかと、個人的に推測しています。

自分で商標登録出願をしている方にはぜひ覚えておいてほしいのですが、「拒絶理由通知=登録拒絶の確定」ではありません。特に、最初の拒絶理由通知は、あくまで審査官の一次的な判断にすぎません。

審査官の指摘した拒絶理由について、所定の応答手続を行なって解消することができれば、その判断は覆り、商標登録はちゃんと認められるのです。

ですから、拒絶理由通知が来た際に「何もしない」というのは、我々からすれば非常に「もったいない」と言わざるを得ません。



3.軽微な拒絶理由なら、解消は難しくない

しかも、その拒絶理由が軽微である場合は、「何もしない」というのは特にもったいないと言わざるを得ないものです。

軽微な拒絶理由というのは、たとえば、願書の指定商品・指定役務の記載が不明確であったり、具体的でない場合や、それらの区分が不適切な場合です。この場合、拒絶理由通知書には、「第6条第1項」や「第6条第2項」が理由として挙げられます。

このような場合、その大半は拒絶理由の解消が難しくありません。
※もちろん、ケースにもよります。

特に最近では、審査官が親切に「解消方法」まで詳しく書いてくれていることがほとんどですので、そのとおりに修正(補正)等の手続をすれば、最終的に商標登録が認められることは十分に可能なのです。

他にも、「第3条第1項柱書」の拒絶理由も、解消するのは比較的容易です。

せっかく解消が難儀な拒絶理由で引っかかっていないのに、ここで何もしなかったために最終的に登録拒絶になるというのは、本当に、本当に、もったいないことですので、この点については、ぜひとも覚えておいていただきたいと思います。

軽微な拒絶理由にもかからわず、応答せずに拒絶査定となった例
 ↑拒絶理由は軽微であるが、何もせずに拒絶査定となった「自力出願」例。
  早期審査も自分で申請して失敗している。



4.途中からでも弁理士等への依頼は可能です!

また、同時に覚えておいていただきたい事項として、拒絶理由通知が来た段階からでも、弁理士等に依頼することは可能だという点が挙げられます。

自分で商標登録出願をしたら、最後まで自分で対応しないといけないと思っている方もおられるかもしれませんが、そんなことはありません。

たしかに、弁理士等に依頼をすればそれなりの費用はかかりますが、何もせずに登録拒絶となった場合も出願料はパァです。価値観にもよるのかもしれませんが、ご自身の大切な商標であれば、多少費用はかかっても、ここでしっかり登録しておくという方向で動いた方が得策ではないでしょうか。

本当に商標登録を望んでいるのなら、拒絶理由通知を受け取った時点で、すぐに弁理士や特許事務所に相談して、対応を依頼することを強くお勧めいたします。なお、手続によっては応答期限があるものもありますので、ご相談はできるだけ早め早めが望ましいです。

ちなみに、状況によっては、途中からの依頼を受け付けてくれない弁理士等もあるかと思われます。依頼人は「お客様」とはいえ、弁理士等にもそれぞれのポリシーがありますので、これはしかたがありません。たとえば、仕事が立て込んでいて時間的な余裕がない場合に、既存の依頼人(最初の段階から依頼をしてくれている依頼人)の対応の方を優先するためにやむを得ず依頼を断るというのは、ある意味自然でしょう。このような点からも、早め早めの相談が望ましいのです。

また、応答手続を弁理士等に依頼する場合、最初の段階から依頼する場合に比べると料金が割高となる可能性があることも、事前に覚悟しておく必要があります。途中から依頼した場合、弁理士にはこれまでの経緯や出願内容を一から見直し、確認する作業が追加で発生しますので、これもしかたがありません。ただ、その場合でも、拒絶理由が軽微であればそこまで高額にはならないとは思われます。



5.まとめ

「その商標、商標登録できていたのに・・・。」

このように残念に感じる事例を、近年よく見かけます。

その多くが、弁理士等に依頼せず、自分で出願をしているケースと考えられます。拒絶理由通知が発せられた際、その理由が軽微であるにもかかわらず、出願人が何も応答せずに登録拒絶となっている事例は少なくないと思われます。

「拒絶理由通知=登録拒絶の確定」ではなく、適切な応答手続によって、最終的に商標登録が認められることは十分に可能です。特に、拒絶理由が軽微であれば、その大半は解消が難しくありません。「何も応答しない」というのは、非常にもったいないと言わざるを得ません。

そして、たとえ自分で商標登録出願をしていたとしても、途中から弁理士や特許事務所に対応を依頼することは可能です。拒絶理由通知を受けた場合、その商標の商標登録を強く望むのであれば、すぐに弁理士等に相談して、対応を依頼することを強くお勧めする次第です。

なお、弁理士としての本音を言うと、より適切な商標登録をするために、「自力出願」とするのではなく、できれば最初の段階から弁理士や特許事務所に商標登録を相談・依頼することをご検討いただきたいところです。



※:関連リンク

商標登録出願の拒絶理由通知書が届いた
商標登録出願に拒絶査定がされた
商標の登録拒絶対応のご案内
商標登録の拒絶対応サービス


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