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数字で見る商標登録と商標登録出願(2023年版)

<新着コラム> 2023年8月18日

毎年恒例となっておりますが、当事務所のコラムでは、各年の「日本における商標登録出願や商標登録などの件数」を考察しております。

今回は、昨年2022年の統計情報を見てみましょう。

昨年2022年は、世界情勢の大きな変化により、我が国でも物価高騰などの大きな影響を受けた1年だったと言えるでしょう。ただ、後半頃からはコロナ禍も落ち着いてきた印象があり、国内における経済活動には復活の兆しが見えてきたような気がします。

とはいえ、2021年と同様に、2022年も多くの事業者にとっては、依然として厳しい状況下にあったと思われます。このような中で、商標登録出願や商標登録などの数にはどういった変化が見られたのでしょうか。

なお、本コラムで言及する統計情報は、特許庁の「特許行政年次報告書2023年版」に基づいております。その他の詳細な情報を知りたい方はこちらもご覧ください。



1.2022年の商標登録出願の件数

昨年2022年の商標登録出願件数は、17万275件ということでした。
2021年の18万4631件と比べると、約14,000件の減少となります。
かなり大きく減ったと言えそうです。

ただ、「国際商標登録出願」の件数は、それほど減少していません。
減ったと言っても、約300件程度にすぎません。
つまり、減少した約14,000件のほとんどが、国際商標登録出願を除いた、日本国特許庁になされた商標登録出願だということになります。

やはり、物価高騰などの影響により、日本国内の企業等が知財にかけられる予算が制限されてしまったのでしょうか。

なお、2022年の中小企業による出願は、74,010件だったということです。
2021年の79,138件に比べると減少していますが、大幅に減ったというわけではなさそうです。とはいえ、2019年から毎年減少し続けているという点は気になります。長く続くコロナ禍の影響が、ジワジワと効いているのかもしれません。

いずれにしても、出願件数自体は全体的に減少傾向にあり、あまり楽観はできない状況だと思われます。



2.2022年の商標登録の件数

昨年2022年の商標登録件数は、18万3804件ということでした。

一昨年2021年は前年比28.7%増という大幅な増加となりましたが、2022年のこの18万3804件という数も、さらに前年比5.6%増という結果となっています。3年前の2019年が10万9859件だったことを踏まえると、近年の増加率はすさまじいと言えます。

なお、登録査定の件数については、前年より約2,700件の増加となっているようです。

これらの数を見ると、特許庁がかなり審査を頑張ってくれているように感じます。
昨年は、審査結果が出るまで体感的にかなり早かった印象があり、実際、統計的にも平均して約3か月の審査期間の短縮を特許庁は達成しているようです。

「審査が早くなった」、「商標登録が多く認められた」というのは、歓迎されるべきことでしょう。ただ、その分、「商標登録が本来認められるべきでない商標に、誤って登録が認められているケース」も、それなりに生じているかもしれないと考えられる点には、注意が必要かもしれません。

昨年も書きましたが、審査期間の短縮や商標登録数の激増が、逆に審査の質の低下を招いていないかという点については、慎重に検証することを忘れてはならないと思います。



3.2022年の審判請求・異議申立ての件数

最後に、商標分野の審判請求・異議申立ての件数について簡単に見てみましょう。

2022年は、前年と比べて、すべての審判請求・異議申立ての件数が増加しています。

まず、商標分野の「拒絶査定不服審判」が請求された数は1,532件でした
2021年の1,107件と比べると、かなり増加したと言えます。
2020年の請求数は742件でしたので、たった2年で倍以上になったことがわかります。

正直、その原因の予測がつきませんが、昨年にいったい何があったのでしょうか。
(商標分野だけでなく、特許分野でも急に増えています。)

また、昨年2022年の「商標登録異議申立て」の件数は、565件でした
こちらも2021年の487件と比べると、増加傾向にあります。

なお、昨年の「拒絶査定不服審判」の請求件数と「商標登録異議申立て」の件数は、いずれも過去10年で最多となっています。

ちなみに、「無効審判」の請求件数はほぼ横ばい(3件の増加)、「取消審判」の請求件数は約80件の増加となっています。(「取消審判」の請求件数も、過去10年で最多)

商標登録出願の件数は大幅に減少しているのに対して、審判の請求件数や異議申立ての件数が増加しているというのは、興味深い傾向です。

なお、その他の審判の請求件数や、出訴件数など、統計の詳細に関する情報は、前掲特許庁のウェブサイトをご参照ください。



4.おわりに

昨年2022年は、商標登録出願の件数がガクンと減ってしまった印象があります。
2021年には微増していたこともあり、残念な傾向であると言えます。

やはり、世界情勢の変化による物価高騰の影響などで、企業等の知財にかけられる予算が制限されたという一面があったのかもしれません。また、長引くコロナ禍の影響が、事業者にジワジワと効いてきたという原因もあったのかもしれません。

一方で、商標登録件数や登録査定の件数は、2021年に続き増加傾向にあります。
昨年2022年は、審査期間のさらなる短縮化も達成されました。
大変素晴らしいことではありますが、これらが審査の質にマイナスの影響を与えていないかを念のため検証することは、引き続き必要と言えるでしょう。

審判請求・異議申立ての件数は、2021年に続き増加傾向となっています。
商標登録出願の件数は大幅に減少しているのに対して、これらの件数が増加している傾向があるのは興味深いと言えます。しかも、昨年2022年も、拒絶査定不服審判と商標登録異議申立ての請求・申立件数が、ともに過去10年で最多となっています。

来年、どのような統計情報が出るのか今から楽しみです。


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