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商標、バズった時がリスク「大」

<新着コラム> 2023年5月23日

商標登録をするかしないか」は、事業者の任意です。
費用がかかることですので、事業者にとっては悩ましい問題かと思います。
実際には、商標登録をしないで、商品名・サービス名・店名などの「商標」を使っている事業者も、少なくはないでしょう。

しかし、この場合、さまざまなリスクがあることは言うまでもありません。
※商標登録をしないリスクについては、「商標登録しないとどうなるのか」をご参照ください。

ところで、事業を行なっていると、ある日突然、自身の商品・サービス・お店などが、何らかのきっかけで大きくメディアに取り上げられ、多くの人に知られることがあるかもしれません。いわゆる、「バズる」ようなケースです。

当事者としては、願ってもない有難い状況と言えるでしょう。
多くの人に知られることで、商品等の売上や人気の増大が期待できるからです。

一方で、多くの人に注目されるということは、それだけ商標に関するリスクも増大すると言わざるを得ません。商標は、バズった時がリスク「大」とも言えるものなのです。そして、商標登録をしていない場合、これが一層顕著になります。

今回のコラムでは、この点について述べてみたいと思います。



1.商標がバズるきっかけ

今の時代、自身の商品・サービス・お店などが、何らかのきっかけで、ある日突然「バズる」ことは十分に起こり得ることです。それらが斬新であったり、人の役に立つものであったり、これまで世の中になかったようなものであれば、その可能性はより高まるでしょう。

商品・サービス・お店がバズるにあたっては、それらの商品名・サービス名・店名が同時に伝えられることになるのが普通でしょう。すなわち、実際にバズりの中心となるのは、基本的には「商標」だと言うことができます

きっかけとしては、SNSやブログ等で一般の人々に影響力のある、いわゆる「インフルエンサー」と呼ばれる人たちが話題に取り上げてくれたり、多くの人々が見ているネット記事等で紹介されたりということが考えられます。

もちろん、「バズる」きっかけはインターネットだけに限ったものではありません。テレビ番組で大きく紹介されたり、人気のある情報誌などで話題にされたりといったことも考えられるでしょう。



2.注目するのは顧客層だけではない

こういった「バズり」が突然発生することは、一般的には、事業者にとって願ってもないことでしょう。なぜなら、自身の商品・サービス・お店などが、自動的に多くの顧客層に知れ渡ることで、今後の売上や人気の増大を大いに期待できるからです。高い広告費を支払う必要もありません。「バズり」は「炎上」とは異なり、まずネガティブなイメージも生じません。

しかしながら、人々に大きく知れ渡れば、注目するのは顧客層だけではないという点には注意が必要でしょう。当然に、ライバル事業者(競業者)の目にも留まることになるはずです。

これらのライバル事業者からすれば、一般人のような「へぇ~」という関心よりも、むしろ「突然出てきて、気に入らない」とか、「自分の事業にとって邪魔になる」という心理になる方が、自然と言えるのではないでしょうか。ビジネスの世界での話ですから、このような点があることは忘れてはなりません。

また、世の中には必ずと言ってよいほど、「流行を利用して悪いことをしようとする人」がいるものです。「バズる」ということは、こういった悪い人たちに目を付けられる可能性も高くなるという点も、忘れてはならないでしょう。



3.商標登録をしていない場合に起こり得ること

上述のように、商品・サービス・お店がバズるにあたって、実際にその中心となるのは、商品名・サービス名・店名などの「商標」だと言うことができます。

ということは、バズればバズるほど、その事業者の使っている「商標」が、人々の間で広く知られることになるわけです。

そうなった場合、商標に関するリスクというのも、比例するように同時に高まっていくと言わざるを得ません。すなわち、それらの商品名・サービス名・店名などについて商標登録をしていない場合は、深刻な状況となってしまうおそれも考えられます。

では、これらの商標について、商標登録をしていない場合に起こり得ることとは、具体的には何が考えられるのでしょうか。主なものとしては、以下のリスクの発生を挙げることができるでしょう。


(1)他社から商標権侵害のクレームを受けるリスク

それらの商標について、実はすでに他人が商標登録しているという状況はあり得ることです。この場合、その登録範囲内で勝手に商標を使えば、商標権の侵害となります。

よって、もっとも深刻と言えるのは、自身が使っている商品名・サービス名・店名などの商標が、実はすでに他人に商標登録されており、知らぬ間にその他人の商標権を侵害してしまっている場合です。

バズったことによって、権利者にそれらの商標の使用事実を知られた結果、商標権を正当に行使されるということは十分にあり得ることなのです。

仮に商標登録をしないにしても、最低限、その商標の使用が「他人の商標権を侵害することがないか」という点を、事前に「商標調査」で確認しておく必要性が高いと言われるのは、こういうことが起こり得るからです。

いくらバズったとしても、結果的に自身が実は「商標権の侵害者」であることが判明すれば、有難い状況になるどころか、かえって自らに不利益な状況を生み出すだけです。せっかく多くの人に知れ渡っても、その商標を早急に変更せざるを得ないことになるでしょう。下手をすれば、損害賠償請求をされるおそれもあります。


(2)第三者に勝手に使われる、マネされるリスク

商標登録をしていない場合、それらの商標を第三者に勝手に使われたり、マネされたりしても、「使うな!」と文句を言うことが難しくなります。商標権のような権利を持っていない状態なのですから、ある意味では当然でしょう。

もし、商標登録がされていないことをライバル事業者などが知れば、その商標を便乗使用して利益を得ようとするかもしれません。

この場合、不正競争防止法などの他の法律を根拠に文句を言えないこともありませんが、そのハードルは高いと言わざるを得ません。対策としてはやはり、それらの商標について、一刻も早く自身が商標登録をすることが現実的でしょう。

バズったことによって、その商標を知る人が増えれば増えるほど、このように勝手に使われたり、マネをされたりするリスクは高まると考えられますので、注意が必要です。


(3)第三者に勝手に商標登録されるリスク

商標登録をしていない場合、それらの商標を第三者に勝手に使われたり、マネされたりするリスクがあることは上述のとおりですが、これに加えて、第三者に勝手に商標登録されてしまうリスクも考えられます

ご存じのとおり、商標登録は「早い者勝ち」です。
原則として、特許庁に先に出願した者に、商標登録は認められるのです。

それらの商標がめちゃくちゃ有名になっていれば、第三者に勝手に出願をされた場合でも、特許庁の審査によって登録を阻止することはできるかもしれませんが、ちょっとバズった程度では、実際のところは難しいと思われます。

第三者に商標登録をされてしまうと、状況としては上述の(1)と同じになりますから、かなり事態は深刻になってしまいます。

バズったことによって、その商標を知る人が増えれば増えるほど、このように勝手に商標登録をされてしまうリスクも高まると考えられますので、注意が必要です。世の中には、こういった商標の商標登録をあえて狙う輩も存在しています。



4.事前の商標登録はやはり重要

さて、このようなリスクを見てきますと、やはり、商標登録をしっかりしておくことがいかに大切かという点が、あらためて理解できるのではないでしょうか。

今の時代、いつ、どこで、突然「バズり」が発生するかわからないからこそ、事前に商標登録の手当てをしておくのが賢明です。商標登録をしておけば、それらの商標の安心・安全な使用を実質的に確保することができます。そのような準備万全の状況で起こった「バズり」であれば、自身のメリットだけを享受することができるはずです。

いざトラブルが起こった場合にかかる費用や手間を考えれば、最初から商標登録をしておく方が間違いなく軽い負担で済みます。義務ではない商標登録にわざわざ費用をかけるのはもったいないという気持ちも、同じ事業者として理解できなくはありませんが、その意義は決して小さくはないことを、ぜひご理解いただければと思います。

やはり、「必要なことには、しっかり費用をかける」という考え方も、大切なのではないでしょうか。



5.まとめ

何らかのきっかけで、商品・サービス・お店などが「バズる」と、実際に人々の間で広く知られるのは、それらの「商標」です。

事業者にとって、「バズる」ことは大変有難い状況ではあるものの、商標登録をしていない場合には、(1)他社から商標権侵害のクレームを受けるリスク、(2)第三者に勝手に使われる、マネされるリスク、(3)第三者に勝手に商標登録されるリスク、などといったリスクの発生も同時に高まることになります。

下手をすれば、バズったことで得られる利益よりも、これらのリスクによって生じる不利益の方が、上回ってしまう事態も十分に考えられるものです。

このようなリスクを事前に回避して、せっかくバズった機会を活かすためにも、あらためて商標登録の検討をお勧めする次第です。



※:関連リンク

商標登録をしないとどうなるのか
商標登録のご案内
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